Recently in 12. エッセイ・記事 Category
去る11月4日、大統領選の結果が発表となりオバマ候補が当選確実となった瞬間に、アメリカ全体が感動の波に飲み込まれました。リンカーン大統領が奴隷を解放してから150年、キング牧師が市民権運動に命を奉げてから40年が経つというのに、人々の心の中にある人種差別の醜い壁はなかなか崩れることがありませんでした。ですから初の黒人大統領誕生という歴史的事実にはとても深い意味があるのです。テレビに映る人がみんな涙目になって、とても優しい顔になっていましたよね。こんなことは私がアメリカに来て初めてです。アメリカの何かが変わった、と思いました。
特に印象的だったのは黒人の人気映画俳優ウィル・スミスさんの感想です。彼は黒人であってもがんばって一生懸命努力すれば何でもできる、と信じてこれまでやってきて事実大成功を収めたのですが、心の隅では長いこと差別されてきた黒人が本当に何でもできるのだろうか、と疑ってきたのだそうです。でもオバマ氏が大統領になれたという事実を前にして、「もはや今までのような(人種差別されたので成功しなかったという)言い訳がすべて通用しなくなった」と悟ったのだそうです。また黒人の女性テレビキャスターもこう言っています。「自分の子供に『将来あなたは大統領にもなれるのよ。もう何の制限もなくなったのだから』と言ってあげることができました。」
オバマ氏の一番の魅力はなんと言ってもその冷静さです。右寄り思想の人達から「テロリスト」「社会主義者」などと言いがかりをつけられても、それに過剰反応することなく「私のゴールは毎日まじめに働いている普通のアメリカ人の生活を良くするために尽力することだ」というメッセージを冷静にしかも力強く送り続けました。もし彼が黒人だけを大事にして白人達を見返してやろうなどという狭い了見の持ち主だったならば、こんなにも多くの人々の支持を得ることはできなかったはずです。かつてキング牧師は「いつの日か私たちの子供が、肌の色ではなく人格の内容で判断されるようになることを私は夢見ている」と言って人々の心を一つにまとめたように、個人の枠を超え全人類の向上を願って行動するときに、人は神に近づくのだと思います。どの人も分け隔てなく暖かく迎え入れようというホンモノの心が人々を感動させるのです。そういうホンモノの心を持ったオバマ氏が次期大統領に選ばれたことは、黒人以外の人たちの心をも潤しました。ある白人の政治解説者は「アメリカが歴史上初めての黒人大統領を選んだということを、私はアメリカ人として心から誇りに思います」とやはり涙目で語っていました。
景気も失業率も最悪のアメリカに希望の火を灯したオバマ氏ですが、今後の道のりは決して楽ではないでしょう。ただ11月4日に一つになった気持ちをアメリカが忘れさえしなければ、再び豊かなアメリカに戻る日も近いと私は思っています。
